2016年10月4日火曜日

宮沢賢治 『祭の晩』














先週末にお祭りがありました。
お天気にも恵まれて
日曜日の朝、元気に出て行った御神輿は
夕方、暗くなってから戻ってきます。
朝とは違ったエネルギーを発散して。
境内に入って
残った力を出し切るかのように、
勢いを増す担ぎ手たち。
御神輿が下されると
御宮入りを見ようと集まっていた人たちが
参道の屋台のほうへ流れます。

屋台の並んだ夜の参道は、
屋台と屋台の間の暗がりや
電球の光に照らされたお店の人たちが
なんだか怖かった子どもの頃を思い出します。

宮沢賢治の作品の中に 『 祭の晩 』 があります。
山の神の秋の祭の晩のお話です。

亮二が空気獣という怪しげな見世物小屋で出会った
煤けた黄金色の目をした
顔の骨ばった赤い大きな男は山男でした。
その後、山男は見世物小屋でお金を使ってしまったのを忘れて
だんごを食べてしまい
村の若い者に罵られます。
それを見ていた亮二は、
残っていた白銅をだまって
山男の大きな足の上に置いてやります。
その銭で救われた山男。

十八日の月が登るころ、
亮二の家の前には
山男の持ってきたお礼の薪の山。
きらきらきらきらする栗の実までありました。

山男の正直さに泣きたいような気持ちになる亮二。
「山男がうれしがって
 泣いてぐるぐるはねまわって、
 それからからだが天に飛んでしまうくらい
 いいものをやりたいなあ。」

山男と亮二の正直さとやさしさに
泣きたいような気持ちになるお話です。

お話とは関係ありませんが、
お祭の中で神楽殿ではお神楽が始まるらしく、
てびらがねだけが静かに鳴っている場面があります。
山男が去ったあと、笛も始まります。
このお神楽はきっと早池峰神楽に違いない、と
想像してしまいます。
始まりのときに舞手が
幕をゆらして出てこない様子や、
いろいろな舞、装束、
最後の権現様の歯打ちの音などを思い描いて
花巻のお祭をうらやましく思っています。

『 祭の晩 』
宮沢賢治 文
荻野弘幸 絵
福武書店 発行
1991年初版
定価¥1340
BOOKS144販売価格¥700

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