秋の公園や
木立ちの中を歩いていると
思い出す絵本があります。
バーバラ・クーニーの『にぐるま ひいて』。
「10月 とうさんは にぐるまに うしを つないだ。」
で、始まる絵本です。
ニューイングランドの家族の生活が描かれています。
1年間、家族で作り、育てたものを
10日がかりで、
ポーツマスの市場へ持って行き、
ひとつひとつすべてを売ります。
じゃがいもの空き袋も、
空の荷車も、
牛も手綱まで。
次に、家族に必要なものを買って、
残ったお金をポケットに入れて
みんなの待ちわびている家に帰ります。
そしてまた新たな一年が始まるのです。
古き良き時代のアメリカの暮らし。
自然とともに生き、
家族みんなで作り出していく
繰り返される日々の温かさ。
扉の次のページに
「人々の生活と
自然のために」
と小さく書かれています。
繊細にていねいに描かれた
クーニーの絵は
どのページを開いても見入ってしまいます。
おとうさんが通っていく秋の丘や谷、小川、
農場や村の秋の風景が
今の時期にぴったりです。
3月の雪の中の
かえでざとうを作っている場面も、
そして5月の
りんごの花の咲いた場面も、
どのページも美しい絵本です。
『にぐるま ひいて』
ドナルド・ホール 文
バーバラ・クーニー 絵
もき かずこ 訳
ほるぷ出版 発行
1980年 第1刷発行
2000年 第29刷
¥700
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